English Dutch French German Italian Portuguese Russian Spanish

)火山ガス・エアロゾルのガイドライン 二酸化硫黄 (SO2)

二酸化硫黄は火山噴火で放出される、(水、二酸化炭素に次いで)最も一般的なガスの一つです。 気候へ影響を与える可能性があるため、地球全体に関わるスケールで重要な問題となります。 局地的なスケールでは、二酸化硫黄はガスの形態で健康に悪影響を及ぼすのと同時に、 酸化して硫酸エアロゾルの形態になるので危険です。

特性

曝露の影響

既存のガイドライン

火山における事例

参考文献

火山ガス ガイドライン トップへ


特性

二酸化硫黄((SO2)は、無色の気体で、独特の刺激臭があります。 この臭いは、個人の感受性によって、認識できるレベルが異なります。 しかし、一般的には、0.3-1.4 ppmで感知されるようになり、3 ppmで容易に認識されるようになります。 (Baxter, 2000; Wellburn, 1994)。 二酸化硫黄は不燃性で、爆発性がなく、比較的安定です。 周囲の大気より2倍以上密度が大きく(25℃、1気圧で2.62 g L-1(Lide, 2003))、 水に非常に溶けやすい性質があります (25℃で85 g L-1 (Gangolli, 1999))。 湿ったものに接触すると、二酸化硫黄は硫酸(H2SO4)になり、 目や粘膜、皮膚に強い刺激を伴った影響を与えます(Komarnisky et al., 2003)。

典型的な場合、希薄な火山噴煙中の二酸化硫黄の濃度は10 ppm以下です。これは、発生源の風下10kmと同じ程度の値です。 ちなみに、一般の対流圏大気中の平均的な濃度は、0.00001-0.07 ppmです(Brimblecombe, 1996; Oppenheimer et al., 1998)。 このガスが6時間から24時間程度の半減期を持つと仮定すると、 1日から4日後に低層大気に存在するのは放出されたガスの約5%だけということになります (Brimblecombe, 1996; Finlayson-Pitts and Pitts, 1986; Porter et al., 2002)。


曝露の影響

二酸化硫黄は、目、のど、気道に刺激を与えます。 二酸化硫黄にさらされ過ぎると短期的な場合、炎症や痛みを引き起こし、 目が赤くなる、せきが出る、呼吸がしづらい、胸が苦しいなどの症状が表われます。 喘息の方は特に二酸化硫黄の影響を受けやすく(Baxter, 2000)、 0.2-0.5 ppm程度の低い濃度で発作を起こすことがあります。 喘息を有する火山学者は、同僚が影響を受けるよりもかなり低い濃度で、体調の異変を認識することが起こりえます。 低濃度(1-5 ppm)に長時間または繰り返しさらされることは、心臓や肺の持病がある方にとっては、 危険なものとなりえます。 健康への影響は、異なった研究者や研究機関によって、様々な濃度についてまとめられています。 これらの健康被害のしきい値の事例の概略が表に示されています。

二酸化硫黄を吸い込んだ場合の健康への影響
(Baxter, 2000; Nemery, 2001; NIOSH 1981; Wellburn, 1994)

曝露限界値(ppm) 健康への影響
1-5 健康な人が運動や深呼吸の際に呼吸器系に影響を受ける閾値
3-5 ガスにすぐ気づく値。安息時の肺機能の低下と、気道抵抗の増加
5 健康な人における気道抵抗の増加
6 目、鼻、のどへの瞬時の刺激
10 目、鼻、のどへの刺激の増加
10-15 長時間曝露に関する毒性の閾値
20+ 継続的な曝露後の麻痺や死亡
150 健康な人が数分だけ耐えられる最大濃度

 

高レベルの二酸化硫黄濃度環境は、子供に様々な健康被害を引き起こすことが明らかになっています(Ware et al., 1986)。 しかしながら、桜島における研究では、子供の喘息の有病率と火山ガスへの長期間の曝露の間には相関が見られませんでした(Uda et al., 1999)。


既存のガイドライン

1971年に、米国環境保護庁は、人々の健康に顕著な被害を引き起こしうる二酸化硫黄のレベルを24時間平均で2620µg m-3 (1 ppm) と設定しました。 粒子状物質やほかの微量成分も存在するときは、このレベルは引き下げられます。 下の表には、二酸化硫黄に関する各国の環境ガイドラインならびに職業ガイドラインが掲載されています。 ガイドラインが国ごとに大きく違うことが分かります。

二酸化硫黄に関する大気環境ガイドライン
カッコ内の値は、公表されているガイドラインの近似的な変換値です。

国/機関 レベル
(ppm)
レベル
(µg m-3)
平均時間 基準の種類 実施時期 関連法律 文献
アルゼンチン 1 2620 1時間   1973年
4月16日
Ley 20.284   a
0.3 780 8時間   1973年
4月16日
Ley 20.284   a
(0.027) 70 1ヵ月   1973年
4月16日
Ley 20.284   a
チリ 0.096 250 24 時間 Primary 2003年
3月6日
D.S. Nº 113/02 1 b
0.031 80 1年 Primary 2003年
3月6日
D.S. Nº 113/02 1 b
中国 (0.057),
(0.191),
(0.267)
150 (i),
500 (ii),
700 (iii)
1時間   1996年
1月
GB 3095-1996 2 a
0.019),
(0.057),
(0.095)
50 (i),
150 (ii),
250 (iii)
24時間   1996年
1月
GB 3095-1996 2 a
(0.008),
(0.023),
(0.038)
20 (i),
60 (ii),
100 (iii)
1年   1996年
1月
GB 3095-1996 2 a
コロンビア (0.573) 1500 3時間 年2回以上は超えない 1982年
1月11日
Decreto No. 2   a
(0.153) 400 24時間 年2回以上は超えない 1982年
1月11日
Decreto No. 2   a
(0.038) 100 1年   1982年
1月11日
Decreto No. 2   a
コスタリカ (0.573) 1500 3時間 年2回以上は超えない   Reglamento sobre 
inmisión de contaminantes atmosféricos
  a
(0.139) 365 24時間 年2回以上は超えない   Reglamento sobre 
inmisión de contaminantes atmosféricos
  a
(0.031) 80 1年     Reglamento sobre 
inmisión de contaminantes atmosféricos
  a
エクアドル (0.573) 1500 3時間 年2回以上は超えない 1991年
7月15日
Registro Oficial No. 726   a
(0.153) 400 24時間 年2回以上は超えない 1991年
7月15日
Registro Oficial No. 726   a
(0.031) 80 1年   1991年
7月15日
Registro Oficial No. 726   a
ヨーロッパ連合 (0.134) 350 1時間 年25回以上は超えない 2005年
1月1日
COUNCIL DIRECTIVE 1999/30/EC 3 c
(0.048) 125 24時間 年4回以上は超えない 2005年
1月1日
COUNCIL DIRECTIVE 1999/30/EC 3 c
(0.008) 20 1年   2001年
7月19日
COUNCIL DIRECTIVE 1999/30/EC 3 c
日本 0.1 260 1時間   1973年
5月16日
    d
0.04 110 24時間   1973年
5月16日
    d
メキシコ (0.130) 341 24時間 年2回以上は超えない 1994年
12月23日
NOM-022- 
SSA1-1993
  a
(0.030) 79 1年   1994年
12月23日
    a
ニュージーランド (0.134) 350 1時間   2002年
5月
  4 e
(0.046) 120 24時間   2002年
5月
  4 e
英国 (0.102) 266 15分 年36回以上は超えない 2004年
12月31日
The Air Quality (England) Regulations 2000   f
(0.134) 350 1時間 年25回以上は超えない 2004年
12月31日
The Air Quality (England) Regulations 2000   f
(0.048) 125 24時間 年4回以上は超えない 2004年
12月31日
The Air Quality (England) Regulations 2000   f
米国 0.14 365 24時間 Primary 1990年 NAAQS   g
0.50 1300 3時間 Secondary 1990年 NAAQS   g
0.030 80 1年 Primary 1990年 NAAQS   g
世界保健機構 0.175 500 10分   2000年 WHO 2000 5 h
(0.048) 125 24時間   2000年 WHO 2000   h
(0.019) 50 1年   2000年 WHO 2000   h
  1. 標準状態は、大気圧(1 atm.)、温度25℃である。
  2. (i) 特別保護をする高感度地域; (ii) 典型的な都市ならびに田園地域 (iii) 特別産業地域。
  3. 20℃、1013hPaで標準化。
  4. 0℃、1気圧での測定。ただし、硫酸ミストは除く。
  5. 疫学調査の証拠に基づく。
  1. http://www.cepis.ops-oms.org/bvsci/e/fulltext/normas/normas.html
  2. http://www.conama.cl/portal/1255/propertyvalue-10316.html
  3. European Commission Guidelines Website
  4. http://www.env.go.jp/en/lar/regulation/aq.html
  5. http://www.mfe.govt.nz/publications/air/ambient-air-quality-may02/index.html
  6. http://www.defra.gov.uk/environment/airquality/airqual/index.htm
  7. http://www.epa.gov/air/criteria.html
  8. WHO, 2000. Guidelines for Air Quality, World Health Organisation, Geneva.

 

環境ガイドラインのまとめ

上の二酸化硫黄の環境ガイドラインの一覧は、各国のガイドラインには非常に幅広い範囲のものが存在することを示しています。 各国のガイドラインの違いは、ガイドラインの発行された年、現在の汚染レベルと将来の予測レベルに基づく現実的な基準設定、 基準を設定したデータ(例えば、疫学調査や実際の汚染レベル)によるものと説明することができます。 ガイドラインで用いられている平均時間は、10分(世界保健機構)から1年まで様々です。 下の表は、各平均時間についてガイドラインの値の範囲をまとめたものです。

二酸化硫黄の環境ガイドラインレベルの範囲のまとめ

平均時間 最小 (ppm) 最大 (ppm)
10-15分 0.102 0.175
1時間 0.057 1
24時間 0.019 0.153
1年 0.008 0.038

 


二酸化硫黄の職業ガイドライン
カッコ内の値は、公表されているガイドラインの近似的な変換値です。

国/機関 レベル
(ppm)
レベル
(µg m-3)
平均時間 基準の種類 実施時期 関連法律 文献
英国 5 13000 15分 MEL       a
2 5300 8時間 TWA MEL       a
米国 5 13000 15分 STEL 1994年 NIOSH/ ACGIH 2 c
5 13000 8時間 TWA PEL   OSHA Regulations (Standards - 29 CFR) 1 b
2 5000 8時間 TWA   1994年 NIOSH/ ACGIH 2 c
0.3 (800) 1時間 ERPG-1 1989年 Emergency Response Planning Guideline   d
3 (7900) 1時間 ERPG-2 1989年 Emergency Response Planning Guideline   d
15 (39300) 1時間 ERPG-3 1989年 Emergency Response Planning Guideline   d
  1. 25℃、760mmHGでの体積ppm。
  2. http://www.cdc.gov/niosh/nmam/
  1. HSE, 2002. Occupational Exposure Limits 2002. HSE Books, Sudbury.
  2. OSHA Guidelines Website
  3. NIOSH Manual of Analytical Methods (NMAM), 1994, Cassinelli, M.E. and O'Connor, P.F. (Eds.). DHHS (NIOSH) Publication 94-113, 4th ed. and/or http://www.osha.gov/dts/chemicalsampling/data/CH_268500.html
  4. AIHA Emergency Response Planning Guidelines Committee, 2002. Emergency Response Planning Guidelines 2002 Complete Set, American Industrial Hygiene Association, Fairfax.

多くの火山観測所は、独自の二酸化硫黄ガイドラインを用意しています。 例えば、日本の阿蘇山の火口では、二酸化硫黄のレベルが1分間継続して0.2 ppmを超えた場合、 もしくは瞬間値で5.0 ppmを超えた場合には、観光客は避難することになっています。 このレベルは、1990年代の火山ガスが関連した事故を受けて、5分間で5ppm以上から引き下げられました (Ng'Walali et al., 1999)。 ハワイ火山国立公園は、USGSハワイ火山観測所と共同で、 公園のスタッフと訪問客を守るために、二酸化硫黄への注意を呼びかける基準を2000年に設定しました(下表)。

ハワイ火山国立公園・ハワイ火山観測所の二酸化硫黄の状況報告表

 


火山における事例

人体に有害な濃度の二酸化硫黄(SO2) は、多くの火山の風下で記録されています。 最も高い濃度に含まれるものは、継続的にガスを放出している次の火山の近くで、しばしば観測されています。

  • ハワイ・キラウエア: 1996年の活動期に時折発生したガス増加イベントでは、観光客用の駐車場における二酸化硫黄の環境濃度が4.0 ppm (BGVN 21:01)まで上昇しました。 これは、米国の3時間の濃度ガイドラインよりも10倍近く高い値です。 1987年から2001年まで、二酸化硫黄の環境濃度がハワイ火山国立公園本部において 米国の24時間第一健康基準を85回以上も上回りました(Elias, 2002)。 人気が高い観光地でのこのような測定がなされたために、公園のための二酸化硫黄ガイドラインが、 導入されました。
  • ニカラグア・マサヤ: 最近、活発にガスを放出しています。 1998年の3月から4月と1999年の2月から3月の時期に 最大44km離れた風下の地点で測定された二酸化硫黄の平均濃度は、0.002以下から0.23 ppm (約5-600 μg m-3) の範囲にありました(Delmelle et al., 2002)。 これらの測定の約30%は、世界保健機構(WHO)の24時間環境ガイドラインのレベルを上回っていました。 14km離れたラノ・パカヤ・リッジで測定された最大濃度は、0.6 ppmでした(Horrocks, 2001)。 2001年5月、サンチャゴ火口の縁で記録されたマサヤ火山の噴煙の二酸化硫黄の最大値は、 3.1 ppm (7950 μg m-3)でした(Allen et al., 2002)。 これらの濃度は、地域住民の健康に危険が及ぶ可能性があることを示唆しており、 地域の住民が、目の刺激や炎症、気管支炎、のどの痛み、頭痛の症状を訴えました。 マサヤ地域では、約5万人の人々が二酸化硫黄と噴煙によって引き起こされた水質汚染の危険にさらされていると推定されています。
  • コスタリカ・ポアス: 火山近辺の住民や研究者は、目やのどの痛みを何度も訴えています。 風下の人口密集地域では、二酸化硫黄の長期測定の平均濃度が最大で約0.28 ppm (730 μg m-3)を示しており、 短期測定では最大で0.3-0.5 ppmとなっています(Nicholson et al., 1996)。 1991年と1992年に観測されたこれらのレベルは、WHOの24時間環境ガイドラインの値を越えており、 15分値を超えた地域もあります。 ポアス火山の火口縁で計測された二酸化硫黄の最高値は約35ppmであり、 すべてのガイドラインのレベルを著しく上回るものでした。
  • チリ・ビジャリカ: 火口縁で測定された二酸化硫黄濃度は、2ppm(NIOSHの二酸化硫黄に関する職業限界値に相当) をしばしば超えたことを示しました(J. Witter pers. comm.)。 夏の観光シーズンのピークには、1日に約100人の観光客がビジャリカ火山の頂上へ登ります。 これらの人々の多くが有害なガスにさらされていることになります。
  • ニュージーランド・ホワイトアイランド: 試験的な健康調査で二酸化硫黄の時間平均測定の結果が報告されました。これによると、 噴気の風下に20分間いた人々は、6ppmから-75ppm程度の二酸化硫黄にさらされていました(Durand et al., 2004)。 これらの濃度は、短期職業曝露限界値を最大で15倍も超えています。

次の例のように、より爆発的な火山活動で、人々や都市が二酸化硫黄放出の深刻な影響を受けることがあります。

  • グアドループ・スーフリエール: 1976年の噴火では、住民は強い二酸化硫黄臭に関連した頭痛を訴えました(LeGuern et al., 1980)。
  • メキシコ・ポポカテペテル: 長期間、活動を続ける火山の風下側正面にあたるメキシコ市では、火山からのガス放出の影響で、 二酸化硫黄濃度が0.08ppm (160 μg m-3)を超え続けてきました。 (Raga et al., 1999). これは、この都市の典型的な月間平均値を4倍以上に当たり、 年および24時間の曝露基準として知られているほとんどのものを超えています。
  • 日本・桜島: この火山は、近年、非常に活発な状態が続いており、風下の広い地域をいぶし続けています。 1980年の桜島町(桜島火山から約5km)における二酸化硫黄の1時間レベルの最大値は、 0.84 ppmであり、日本の環境大気基準を超えていました(Yano et al., 1986)。 1985年の9月から1986年の2月では、桜島の測定局で測られた月平均の二酸化硫黄濃度 0.015ppmから0.138ppmの範囲にあり、この期間の平均で0.079ppmでした(Kawaratani and Fujita, 1990)。 火山周辺地域における健康に関する疫学調査では、 二酸化硫黄濃度と成人と新生児の気管支炎疾病率に正の相関があることが示されています。 (Shinkuro et al., 1999; Wakisaka et al., 1988).
  • 日本・三宅島: 2000年の秋に三宅島から放出された火山ガスが、南および南西の風によって本州に流され、 100-400 km 風下にある地表測定局の多くで高い二酸化硫黄濃度が測定されました。 (e.g. Naoe et al., 2003). 88 km離れた場所では、最大の二酸化硫黄地表面濃度は前年同時期には0.0028 ppmであったものが、 約0.114 ppmありました(An et al., 2003)。   4.5 kmで記録された最大の1時間濃度は、0.945 ppmでした。 これは、日本の大気1時間基準値の9倍以上です。 この噴火は、3000万人以上の人々が住む東京首都圏の待機にも影響を与えており、 都市部でガスの異臭を感じたという報告をした人もいました(Fujita et al., 2003)。 2000年の8月から11月にかけて、日本各地の623の大気測定局における二酸化硫黄レベルが、 1時間大気基準値を超えました(Fujita et al., 2003).

二酸化硫黄高濃度の距離による影響の変化の他の事例:

  • ニカラグア・コンセプシオン: 1986年および1993年の火口からの二酸化硫黄の放出は、風下側8-10kmの地点で測定されましたが、 居住域にガスが行きわたるのに十分なものでした(SEAN 11:05; BGVN 18:03)。
  • チリ・セロハドソン: 1991年10月の硫黄の噴気は、火山の西側斜面にあるフムラス・バレーで非常に強かったので、 気分が悪くなり、嘔吐や意識不明を引き起こした住民が出ました(BGVN 16:09)。 (この噴気がどのような組成だったかは明らかではありませが、 硫酸エアロゾルと硫化水素のどちらか、または両方が含まれていたかも知れません)。
  • アラスカ・セントアウグスティン: 1976年2月1日の噴火による噴煙では、火山の近くで最大10ppmに達する濃度の (調査に当たった研究者はすべて二酸化硫黄と仮定している)硫黄ガスを含んでいました。 風下10kmでは1ppmあり、軽いのどの痛みを引き起こしました(Stith et al., 1978)。
  • ヤヌアツ・ヤスー: 火口の縁の噴煙の中で、危険なレベルの二酸化硫黄が見出されました。 1988年9月には、ここでの噴煙内の濃度は3ppmと9ppmの間でした(SEAN 13:12)。 これは、労働大気基準の多くを上回っています。
  • メキシコ・ポポカテペトル: 1997年2月の火山近くでの二酸化硫黄濃度は約3.8 ppm (10,000 μg m-3)でありました。 これは、NOISHの推奨時間加重平均の2倍です(Goff et al., 1998)。
  • ニカラグア・テリカ: 1984年3月から6月には、火口からの硫黄に富む蒸気が火山の斜面を流れくだり、 谷が高濃度の二酸化硫黄で充満されました。 硫黄臭は北東斜面でも報告されてます(BGVN 19:07)。
  • フィリピン・タール: 1911年の噴火の際に、二酸化硫黄の強い臭気が観測され、 これによって噴火による死者数が増加した可能性が指摘されています(Baxter 1990)。

他の地域において、二酸化硫黄を放出する火山の近くに住む人々や働く人々が、知らず知らずのうちに ガスの危険にされされている可能性があります。 例えば、アゾレスの活動的なファーナス火山のカルデラ内部にあるファーナス湖での平均二酸化硫黄レベルは、 0.115ppmと測定されています。 これは、観光客や現地の人々が噴気を調理に利用する地域で記録されたもので、 1年基準としてリストに示されているどれよりも数倍高く、 ほとんどの1時間ならびに24時間基準値よりも高いものとなっています。 ファーナス村の中心部でのレベルは、0.070-0.085 ppmの範囲にありました(カルデラの内部も同様;Baxter et al., 1999)。 これも、どの1年基準値よりも高いものです。

二酸化硫黄中毒に関連する事故として知られているほとんどのものは、日本の阿蘇火山で起きています(表参照)。 ここでは、過去15年間に二酸化硫黄で7人が死んでおり、 1980年1月から1995年10月の間に、火山ガスの吸引によって、59人が手当てを受けています。 死者の半数以上は、喘息の病歴がありました。 死亡事故の分析にしたがって、二酸化硫黄の避難決定レベルが引き下げられ、 喘息や呼吸器系疾患を予防すうために、曝露の危険に関する厳格な警報が観光客に与えられるようになりました。 (Ng'Walali et al., 1999).

20世紀の火山からの二酸化硫黄放出に関連した死亡ならびに疾病事故 
(BGVN 16:09; Hayakawa, 1999; Ng'Walali et al., 1999に基づく)

火山 時期 死者数/
疾病者数
詳細
日本、阿蘇 1989年2月12日 死者1名 66歳の男性観光客
日本、阿蘇 1990年3月26日 死者1名 観光客
日本、阿蘇 1990年4月18日 死者1名 78歳男性観光客
日本、阿蘇 1990年10月19日 死者1名 54歳女性観光客
チリ、ハドソン 1991年10月11日 嘔吐ならびに意識不明、気分が悪くなった住民数名 1つの谷で強い硫黄の噴気
ハワイ、キラウエア 1993年 死者1名 ハレマウマウ・クレーターの駐車場において、硫黄への感受性が高い観光客が死亡
日本、阿蘇 1994年5月29日 死者1名 69歳女性観光客
日本、阿蘇 1997年11月23日 死者2名 62歳と51歳の男性観光客。彼らが倒れる直前のレベルは5ppmに達していた。


参考文献

Allen, A.G., Oppenheimer, C., Ferm, M., Baxter, P.J., Horrocks, L.A., Galle, B., McGonigle, A.J.S. and Duffell, H.J., 2002. Primary sulfate aerosol and associated emissions from Masaya Volcano, Nicaragua. Journal of Geophysical Research, 107(D23).

An, J., Ueda, H., Matsuda, K., Hasome, H. and Iwata, M., 2003. Simulated impacts of SO2 emissions from the Miyake volcano on concentration and deposition of sulfur oxides in September and October of 2000. Atmospheric Environment, 37(22): 3039-3046.

Baxter, P.J., 1990. Medical effects of volcanic eruptions. Bulletin of Volcanology, 52(7): 532-544.

Baxter, P.J., 2000. Gases. In: P.J. Baxter, P.H. Adams, T.-C. Aw, A. Cockcroft and J.M.

Elias, T., Sutton, A.J., 2002, Volcanic air pollution in our backyard: gas advisory system helps alert people of Hawai`i, Geological Society of America Abstracts with Program, 34 (5): A-11.

Harrington (Editors), Hunter's Diseases of Occupations. Arnold, London, pp. 123-178.

Baxter, P.J., Baubron, J.-C. and Coutinho, R., 1999. Health hazards and disaster potential of ground gas emissions at Furnas volcano, Sao Miguel, Azores. Journal of Volcanology and Geothermal Research, 92(1-2): 95-106.

Brimblecombe, P., 1996. Air Composition and Chemistry. Cambridge University Press, Cambridge.

Delmelle, P., Stix, J., Baxter, P.J., Garcia-Alvarez, J. and Barquero, J., 2002. Atmospheric dispersion, environmental effects and potential health hazard associated with the low-altitude gas plume of Masaya volcano, Nicaragua. Bulletin of Volcanology, 64(6): 423-434.

Durand, M., Florkowski, C., George, P. and Walmsley, T., 2004. Elevated trace element output in urine following acute volcanic gas exposure. Journal of Volcanology and Geothermal Research, 134: 139-148.

Finlayson-Pitts, B.J. and Pitts, J.N., 1986. Atmospheric Chemistry: Fundamentals and Experimental Techniques. Wiley-Interscience Publication. New York.

Fujita, S.-I., Sakurai, T. and Matsuda, K., 2003. Wet and dry deposition of sulfur associated with the eruption of Miyakejima volcano, Japan. Journal of Geophysical Research, 108(D15): DOI: 10.1029/2002JD003064.

Gangolli, S. (Ed.), 1999. The Dictionary of Substances and their Effects, 2nd edn. The Royal Society of Chemistry. Cambridge.

Goff, F., Janik, C.J., Delgado, H., Werner, C., Counce, D., Stimac, J.A., Siebe, C., Love, S.P., Williams, S.N., Fischer, T. and Johnson, L., 1998. Geochemical surveillance of magmatic volatiles at Popocatpetl Volcano, Mexico. Geological Society of America Bulletin, 110(6): 695-710.

Hayakawa, Y., 1999. Catalog of volcanic eruptions during the past 2000 years in Japan. Journal of Geography, 108(4): 472-488.

Jacobson, M.Z., 2002. Atmospheric pollution: history, science and regulation. Cambridge University Press, Cambridge, 399 pp.

Kawaratani, R.K. and Fujita, S.-I., 1990. Wet deposition of volcanic gases and ash in the vicinity of Mount Sakurajima. Atmospheric Environment, 24A(6): 1487-1492.

Komarnisky, L.A., Christopherson, R.J. and Basu, T.K., 2003. Sulfur: its clinical and toxilogical aspects. Nutrition, 19(1): 54-61.

Le Guern, F., Bernard, A. and Chevrier, R.M., 1980. Soufriere of Guadeloupe 1976-1977 eruption - mass and energy transfer and volcanic health hazards. Bulletin of Volcanology, 43(3): 577-593.

Lide, D.R. (Ed.), 2003. CRC Handbook of Chemistry and Physics, 84th edn. CRC Press. Boca Raton, Florida.

Naoe, H., Heintzenberg, J., Okada, K., Zaizen, Y., Hayashi, K., Tateishi, T., Igarashi, Y., Dokiya, Y. and Kinoshita, K., 2003. Composition and size distribution of submicrometer aerosol particles observed on Mt. Fuji in the volcanic plumes from Miyakejima. Atmospheric Environment, 37(22): 3047-3055.

National Institute for Occupational Safety and Health (NIOSH), 1981. Occupational Health Guidelines for Chemical Hazards, DHHS (NIOSH) Publication No. 81-123. http://www.cdc.gov/niosh/81-123.html.

Nemery, B., Hoet, P.H.M. and Nemmar, A., 2001. The Meuse Valley fog of 1930: an air pollution disaster. The Lancet 357(9257), 704-708.

Ng'Walali, P.M., Koreeda, A., Kibayashi, K. and Tsunenari, S., 1999. Fatalities by inhalation of volcanic gas at Mt. Aso crater in Kumamoto, Japan. Legal Medicine, 1: 180-184.

Nicholson, R.A., Roberts, P.D. and Baxter, P.J., 1996. Preliminary studies of acid and gas contamination at Poas volcano, Costa Rica. In: J.D. Appleton, R. Fuge and G.J.H. McCall (Editors), Environmental Geochemistry and Health. The Geological Society, London, pp. 239-244.

Oppenheimer, C., Francis, P., Burton, M., Maciejewski, A.J.H. and Boardman, L., 1998. Remote measurement of volcanic gases by Fourier transform infrared spectroscopy. Applied Physics B, 67: 505-515.

Porter, J.N., Horton, K.A., Mouginis-Mark, P.J., Lienert, B., Sharma, S.K., Lau, E., Sutton, A.J., Elias, T. and Oppenheimer, C., 2002. Sun photometer and lidar measurements of the plume from the Hawaii Kilauea volcano Pu'u O'o vent: aerosol flux and SO2 lifetime. Geophysical Research Letters 29(16), DOI 10.1029/2002GL014744.

Raga, G.B., Kok, G.L., Baumgardner, D., Baez, A. and Rosas, I., 1999. Evidence for volcanic influence on Mexico City aerosols. Geophysical Research Letters, 26(8): 1149-1152.

Shinkuro, R., Fujiyama, C. and Akiba, S., 1999. Relationships between ambient sulfur dioxide levels and neonatal mortality near the Mt. Sakurajima volcano in Japan. Journal of Epidemiology, 9(5): 344-349.

Smithsonian Institution, 1986. Concepcion. Scientific Event Alert Network (SEAN) Bulletin, v. 11, no. 5.

Smithsonian Institution, 1988. Yasur. Scientific Event Alert Network (SEAN) Bulletin, v. 13, no. 12.

Smithsonian Institution, 1991. Hudson. Bulletin of the Global Volcanism Network (BGVN), v. 16, no. 9.

Smithsonian Institution, 1993. Concepcion. Bulletin of the Global Volcanism Network (BGVN), v. 18, no. 3.

Smithsonian Institution, 1994. Telica. Bulletin of the Global Volcanism Network (BGVN), v. 19, no. 7.

Smithsonian Institution, 1996. Kilauea. Bulletin of the Global Volcanism Network (BGVN), v. 21, no. 1.

Stith, J.L., Hobbs, P.V. and Radke, L.F., 1978. Airborne particle and gas measurements in the emissions from six volcanoes. Journal of Geophysical Research, 83(C8): 4009-4017.

Uda, H., Akiba, S., Hatano, H. and Shinkuro, R., 1999. Asthma-like disease in the children living in the neighbourhood of Mt. Sakurajima. Journal of Epidemiology, 9(1): 27-31.

Wakisaka, I., Yanagihashi, T., Tomari, T. and Ando, T., 1988. Effects of volcanic activity on the mortality figures of respiratory disease. Japan Journal of Hygiene, 42(6): 1101-1110.

Ware, J.H., Ferris, B.G.J.R. and Dockery, D.W., 1986. Effects of ambient sulfur oxides and suspended particles on respiratory health of preadolescent children. American Review of Respiratory Disease, 133: 834-842.

Wellburn, A., 1994. Air Pollution and Climate Change: the biological impact. Addison Wesley Longman Limited, Harlow, 268 pp.

Yano, E., Yokoyama, Y. and Nishii, S., 1986. Chronic pulmonary effects of volcanic ash: an epidemiological study. Archives of Environmental Health, 41(2): 94-99.